「鼻から酸素吸入」は薬です ~前編~ 日本医科大学呼吸ケアクリニック

コラム

「鼻から酸素吸入」は薬です ~前編~

慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息、肺結核後遺症、間質性肺炎、肺がんなどが原因でからだの酸素が低い状態(低酸素血症)にあり、それにより障害が出た状態を『呼吸不全』と呼びます。症状としては、初期の段階ではあまり感じない「息切れ」が次第に強くなり日常化して、一日の歩く距離、歩数が減っていくことによって、下肢の筋力が低下していきます。これに歯止めをかけるため、筋力トレーニングやジムに通い運動することを励行しますが、やはり息切れが苦痛となって思うように成績が伸びません。

からだの酸素が十分であるかを知るには、最近コロナ肺炎の簡易診断に用いられて話題となった、指先の色で酸素量を計算する経皮的酸素飽和度測定器があります。しかし、正確な判断には二酸化炭素の濃度も必要であることから、動脈から採血して『動脈血酸素分圧』と言われる数値を測定し、その値が60mmHg以下(酸素飽和度が 90%以下)であった場合、初めて呼吸不全と診断されます。

このような状態の患者さんには、低酸素血症を改善して継続的な運動を可能にするため、おくすりと同様に酸素を吸入する必要がありますが、自宅でも酸素を吸入できるようにしたものが在宅酸素療法(通称HOT:Home oxygen therapy)です。

後編では、在宅酸素療法とはどのようなものかお話いたします。

医師 日野 光紀

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