お盆の時期にご用心⁉ ~RSウイルスワクチンをご存知ですか~ 日本医科大学呼吸ケアクリニック

コラム

お盆の時期にご用心⁉ ~RSウイルスワクチンをご存知ですか~

夏真っ盛り、夏休みのご予定はお決まりですか?夏休みといえば、お孫さんを預かったり習い事の送り迎えを引き受けたり、また、お盆休みにお会いになるというご高齢の方も多いのではないでしょうか?

そんなお盆の時期に気をつけていただきたい感染症の一つが、RSウイルス感染症です。RSウイルスのRは「Respiratory(呼吸器)」の略で、呼吸器症状を強く呈するウイルスです。年齢を問わず生涯にわたって何度でも感染しますが、主に乳幼児や児童から家庭内伝播することが多く、高齢者、特に呼吸器や心臓に基礎疾患を持つ高齢者が感染した場合、重症化することが知られています*1。「お孫さんから風邪をうつされちゃった」と軽く考えていたら、肺炎や気管支炎、それに伴う基礎疾患の増悪をきたして入院に至ってしまった、という例も珍しくありません*2

以前は11月~1月に流行することが多かったのですが、2020年以降は感染のピークが前倒しになり、8月頃に最も多く報告されるようになりました*3。高齢者の皆さんが小さいお子さんと触れ合う機会の多いこの時期、特に注意が必要です。

RSウイルスに対する特効薬は今のところありませんが、予防に有効なワクチンが開発され、2023年から本邦でも使用できるようになりました。慢性呼吸器疾患の患者さんが多くいらっしゃる当クリニックでも接種が可能です。60歳以上の方、もしくは重症化リスクの高い50歳以上の方が適応となります*4。ご興味のある方は、院内にある掲示やパンフレットをご覧いただき、担当医師にご相談ください。

ただでさえ、長い酷暑で弱りがちなこの季節、感染症予防で安心して楽しく過ごしませんか?

〈文責:医師  清水あゆみ〉

脚注、参考文献

*1

1 Centers for Disease Control and Prevention (CDC), RSV in Older Adults and Adults with Chronic Medical Conditions, 2023.
2 Belongia EA et al: Open Forum Infect Dis 2018; 5(12), ofy316.
3 Branche AR et al. Incidence of Respiratory Syncytial Virus Infection Among Hospitalized Adults, 2017-2020, Clin Infect Dis 2022;74: 1004–1011.
4 Wyffels V et al: Adv Ther 2020; 37(3),1203-1217.
5 Ivey KS et al: J Am Coll Cardiol 2018; 71(14), 1574-1583.

*2

1 Centers for Disease Control and Prevention (CDC), RSV in Older Adults and Adults with Chronic Medical Conditions, 2023.
2 Ivey KS et al: J Am Coll Cardiol 2018; 71(14), 1574-1583.

*3

1.国立健康危機管理研究機構「感染症発生動向調査からみる2018年~2023年の我が国のRSウイルス感染症の状況」(掲載日2024年4月26日) 感染症発生動向調査週報(IDWR)過去10年間との比較グラフhttps://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/graph/weekly/021/index.html

(アクセス 2025年4月)

2.WHO Director-General’s opening remarks at the media briefing on COVID-19 – 11 March 2020.  https://www.who.int/director-general/speeches/detail/who-director-general-s-opening-remarks-at-the-media-briefing-on-covid-19—11-march-2020

(アクセス 2024年9月)

*4

50歳以上のRSウイルスによる感染症が重症化するリスクが高いと考えられる者とは、「慢性肺疾患、慢性心血管疾患、慢性腎臓病又は慢性肝疾患、糖尿病、神経疾患又は神経筋疾患、肥満、上記以外で、医師が本剤の接種を必要と認めた者」を指す。

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