日本医科大学呼吸ケアクリニックによる呼吸器感染症の診療内容を掲載しております。

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主な診療内容

呼吸器感染症

特徴

感染性呼吸器疾患は、感冒(かぜ症候群)、インフルエンザ、急性気管支炎、市中肺炎、病院・介護施設などで起こる肺炎、肺膿瘍、肺結核、肺非結核性抗酸菌症(MAC症)、肺真菌症、肺寄生虫症、ウイルス性肺炎、高齢者や神経疾患の患者さんに多く発生する誤嚥性肺炎など、非常に多岐に渡ります。いずれの病気もはじめは風邪のような症状で発症することが多いですが、風邪と思えないほど症状が強い、風邪と思えないほど症状が長引くあるいは繰り返すような場合は、呼吸器専門医の診察を受けることをお勧めします。

市中肺炎

2018年の厚生労働省の統計によると、わが国における肺炎による死亡数は、悪性新生物、心疾患、老衰、脳血管疾患に続く第5位となっています。このうち市中で起こる肺炎は、一般の社会生活を送っている人、すなわち健康な人あるいは軽度の病気を持っている人に起きる肺炎を指します。

原因となる微生物は、肺炎球菌が最も多く、次いでインフルエンザ菌、肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミドフィラとなっています。咳、たん、息切れ、胸の痛み、発熱などの症状、疲れやすい、発汗、頭痛、吐き気、筋肉の痛み、さらには、お腹の痛みや下痢といった症状がみられることもあります。高齢者では、肺炎を起してもこのような症状をはっきりと示さないことがあります。

診察所見、胸部レントゲン、血液検査などで診断します。肺炎と診断した場合には、さらに原因微生物を特定するために、鼻やのどの奥をぬぐいとったり、たんや尿の検査をします。軽症であれば、抗菌薬を内服し、外来への通院で治療します。年齢や呼吸状態などから重症と判断した場合には、入院にて、抗菌薬を注射します。普段から栄養の保持に心掛け、よく体を動かし、禁煙に努めることと、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンを接種しておくことが、肺炎予防につながります。

肺結核

感染力の強さでとくに問題となるのが結核です。結核を疑う症状は、(1)たんのからむ咳が2週間以上続く、(2)微熱・身体のだるさが2週間以上続くことですが、高齢者の場合は症状が出ないことがあります。結核は昔の病気と思われがちですが、今でも1日に50人の新しい患者が発生し、5人が命を落としている日本の重大な感染症です。咳やくしゃみなどの空気感染により、人から人へうつり周囲へ感染が拡大するため、早い段階で疑って検査を受けることが大切です。結核は6~9か月間毎日きちんと薬を飲めば治ります。また医療費の公的負担制度もあります。

肺非結核性抗酸菌症(MAC症)

肺非結核性抗酸菌症は結核菌以外の抗酸菌が肺に感染して起こる病気です。非結核性抗酸菌は土や水などの環境中にいる菌で、人から人には感染しません。菌の種類は150種類以上ありますが、非結核性肺抗酸菌症の80%がMAC菌で、次に多いカンサシ菌が10%です。女性にやや多く、年間約8,000人が発症します。多くは数年から10年以上かけてゆっくりと進行します。症状がなく検診の胸部レントゲン検査などで発見される場合、咳、たん、血たん、だるさ、発熱、寝汗、体重減少などの症状が出て診断される場合があります。

たんの培養で菌が証明されれば診断になりますが、結果が出るまでに6週間程度かかることがあります。たんから2回以上同じ菌が出ることが診断に必要です。たんが出ない場合は気管支鏡検査を行い、検体の培養を行います。

治療は、症状や肺の影が悪化してくる場合には薬による治療を行います。数種類の薬を併用して毎日内服し、少なくとも年単位で続ける必要があります。菌が完全に消えることはまれであり、治療終了後も再発しないか定期的に胸部レントゲン検査をします。

肺真菌症

カビの仲間を総称して真菌と呼びます。肺真菌症は真菌を吸い込むことによって発病する感染症です。真菌の種類は様々で、カンジダやアスペルギルス、クリプトコッカス、ムコールなど、種類により病変が異なります。真菌は空気などの環境中に存在しています。環境から吸い込んで体内に入ったり、口の中や皮膚に付いたりしていますが、健康な人に肺真菌症が起こることはまれです。ステロイド剤や免疫抑制剤、抗がん剤の治療をしていたり、抵抗力が落ちている方に発症することがあります。クリプトコッカスは健康な人にも病気を引き起こすことがあります。

発熱や咳、たん、血たん、だるさ、呼吸困難などの症状が現れます。結核や肺炎などと似た症状のため真菌が原因と疑いにくい場合があります。急激に症状が進む場合と緩やかな場合があり、真菌の種類によっても様々です。

胸部レントゲン検査、胸部CT検査で影があらわれますが、決め手となる特徴的な画像となることは多くありません。たんの検査や気管支鏡検査で病巣部の分泌物などを培養して真菌を証明します。血液検査も診断の助けとなります。

治療は、真菌の種類によって異なりますが、抗真菌薬による治療が主です。病変が1カ所に限定している場合には手術で切除する場合もあります。

ウイルス性肺炎

さまざまなウイルスが肺炎を来すことが知られています。乳幼児や高齢者ではインフルエンザウイルス、乳幼児ではRSウイルス、アデノウイルス、ヒトメタニューモウイルスなど、免疫抑制者ではサイトメガロウイルス、近年の流行で注目されるコロナウイルスなどがあげられます。麻疹ウイルス、水痘ウイルスでも肺炎を来すことがあります。

発熱、咳、重症の場合は呼吸困難を呈します。細菌性肺炎と異なり、膿性たんが出にくいのが特徴です。他の全身症状としては筋肉痛、頭痛、全身倦怠感などを認めることも多いとされます。のどや鼻の奥から綿棒でウイルス抗原を検出して診断する方法、ウイルスの遺伝子情報を増幅して調べるPCR法、病初期と回復期の2回採血検査を行って(ペア血清と言います)抗体価が上昇することを確認し診断する方法などがあります。

治療はインフルエンザウイルスでは抗インフルエンザ薬を用います。サイトメガロウイルスや水痘ウイルスにも抗ウイルス薬があります。しかし多くのウイルスに対する治療薬は確立されておらず、対症療法が重要となります。解熱薬、適切な輸液、鎮咳薬、去たん薬などを使用し、保温、保湿、栄養補給などを行います。重症例では酸素吸入や人工呼吸を行う場合もあります。

誤嚥性肺炎

物を飲み込む働きを嚥下機能、口から食道へ入るべきものが気管に入ってしまうことを誤嚥と言います。誤嚥性肺炎は、嚥下機能障害のため唾液や食べ物、あるいは胃液などと一緒に細菌を気道に誤って吸引することにより発症します。高齢者、脳梗塞後遺症やパーキンソン病などの神経疾患や寝たきりの方に多く発生し、肺炎球菌や口腔内の常在菌が原因となることが多いとされます。高齢者や神経疾患などで寝たきりの方は口腔内の清潔が十分に保たれていないこともあり、この場合、口腔内で肺炎の原因となる細菌がより多く増殖してしまいます。また、咳反射が弱くなり嚥下機能が低下します。その結果、口腔内の細菌が気管から肺へと吸引され、肺炎を発症します。栄養状態が不良であることや免疫機能の低下なども発症に関与してきます。発熱、咳、たんが典型的な症状ですが、これらの症状がなく、なんとなく元気がない、食欲がない、のどがゴロゴロとなる、などの非特異的な症状のみがみられることが多いのが誤嚥性肺炎の特徴です。

誤嚥が明らかな場合や嚥下機能低下が確認されている場合は胸部レントゲン写真で肺炎像を確認することで診断できます。白血球増加や炎症反応の亢進も重要な所見です。

抗菌薬を用いた薬物療法が基本です。口腔ケアの徹底、嚥下指導も重要です。嚥下機能に悪影響を及ぼす薬物を内服していれば中止し、嚥下反射を改善する効果が確認されているACE阻害薬などの適応を検討することもあります。喫煙は気道粘膜の浄化を抑制し、細菌を付着しやすくするため、禁煙は重要です。また誤嚥防止のリハビリテーションも有効とされています。介護者は、食事の際に十分に上体を起こし、ゆっくりと咀嚼・嚥下するようサポートすることが大切です。肺炎球菌のワクチンも受けておきましょう。

(日本呼吸器学会ホームページより一部改変し転載)

患者さんとご家族の方へ

当クリニックは日本医科大学付属病院および大学関連病院、結核専門施設である複十字病院 (東京都清瀬市) 等と連携し、感染症に関するより高度な診療を必要とする患者さんの対応を行っています。気になる症状がありましたらまずは当クリニックを受診していただき、診察および必要な検査を受けて下さい。感染症が疑われる患者さんにおきましては、待合室内での感染拡大を予防するため、別室の待合室を用意しご案内しております。お手数ではございますが、お電話でご予約の際には事前に体温を測定の上、症状についてもあわせてお知らせ下さい。